そういえばまだ。
この部屋の主は言った。
そういえばまだ、名前、教えてなかったわね。
そういえばそうだった。異世界へ飛ばされたり飛ばされた先が年端もいかない少女の部屋だったりと予想外のことが立て続けに起きたので、名前を訊くことなどすっかり忘れていたのだ。
私の名前は。ファーストネームがで、ファミリーネームが。
…?
俺が反芻するように呟くと、が、フルネームで言うときはファミリーネームが先なの、と教えてくれた。
今俺の前に居る黒髪の少女の名前は。フルネームで。
これからよろしく、。
俺がそう言うと、は微笑んで同じように言葉を返した。
見知らぬ世界での生活。それもこれまた見知らぬ少女の部屋での。
そんなこれからの生活を考え、俺は目を閉じた。
そして目を開ければ、そこには少女、が居る。
これからよろしく、。心の中だけで呟き、俺はまた心の中だけで微笑んだ。