夜闇に不自然に浮かび上がる蜂蜜色に近付いてみれば、そこに居たのはガイだった。
 は予想に反して冷静な自己のまま、ゆっくりとガイに近付いて行く。
「……どうして、こんな所に?」
 庭の置き石の上に座っているガイに問う。
 今が立っている場所は、自身の家の庭である。つまり、ガイは家から出てすらいない。
「……。」
 ガイは口を開き、
「…出来なかった。」
 言った。
「元の世界に戻らなきゃいけないんだ。その方法を探すためにの家を出た。…でも、出来なかった。」
 は黙ってガイの話を聞く。
「…前も言った通り、あてはない。頼れるのはだけだってのに、そのから離れてしまった。――…怖くなったんだ…。」
 ガイのすぐ側には立っている。
「…だから、中途半端に、こんな所に居るんだ…。」
 そしてようやくガイはを見て、弱々しく笑う。
「――駄目だな。元の世界に戻ろうとすることも、から離れることも出来ない…。」
 はそんなガイを見て、
「……。」
 側に座り込んで、
「…私は、」
 そして口を開いた。
「私は、あなたが居ることを、迷惑だなんて思っていない。」
 言ってから、違う、と首を振る。
「違う。…私は、あなたに居て欲しい。」
 ガイはその言葉に目を見開き、少し驚いた様子を見せてから、
「…――だから、居て。」
 しばらく固まり、そして照れたように微笑んだ。
 そして頷く。それだけで充分だった。