「構わん、やれ!」
 矢が。
 矢が放たれた。矢が。
 棒きれの先に小さな刃のついた、ちっぽけな武器が美しい弧を描いて飛んでゆく。
 そしてその矢は、
 ザルバッグの信じてきたもの彼の愛してきたもの彼の見捨ててきたもの彼の拠り所となってきたもの彼の自信となってきたもの彼の誇りとなってきたもの彼を培ってきたもの彼の記憶彼の歴史彼の信念彼の思い出彼を構成するそれら全ての上を通り過ぎて、
 彼の大切にしてきた少女を、大切にしてきたという気持ちごと貫いた。