死んで、それから消滅するまで、ついぞザルバッグは仲間達を思い出さなかった。
しかしそれでよかったのだ。ザルバッグという人間が生きていたとき、彼は何度だって、それはもう飽きるくらいに、彼らの存在を噛みしめていたのだから。
今のザルバッグはただの抜け殻だ。存在の存在だ。彼の戦いは彼が死んだときにもう終わった。
今の彼には、記憶も心も何もない。自分を責める気持ちも、不正を憎む気持ちも。
ただ……
ザルバッグに愛を告白してきた、ある一人の女性の姿が、刹那に浮かんだ。
死ぬなと言われたのに。死なないと言ったのに。
また彼女に怒られるなと、ザルバッグは溶けゆく意識の中で思った。